大盛況!幻の映画『落下の王国』を解体する
幻の映画『落下の王国』が4Kデジタルリマスターで蘇る!
2008年の日本公開以来、配信されることなく“幻”とされ続けてきたカルト的ファンタジー『落下の王国』。
『ザ・セル』で鮮烈なビジュアル世界を築き、世界に衝撃を与えた“映像の魔術師”ターセム監督が、構想26年、撮影期間4年の歳月をかけて完成させた一級美術品。
2025年11月21日に公開された『落下の王国 4Kデジタルリマスター』が、興行収入2億円を突破したそうです。(シネマカフェの記事より)
なぜ“幻の映画”と呼ばれているか。
それは現在のところ(2025年12月時点)配信サービスでの配信やBlu-ray/DVDなどの円盤(パッケージ)化はされておらず、視聴するには現在上映中の映画館(劇場公開)で観るしかない状況だからです。
終映日は未定の劇場が多く、通常3〜4週間、長くても2ヶ月程度で終了することが多いので、気になる方はお早めに!!

映画『落下の王国』のあらすじ
時は1915年。映画の撮影中、橋から落ちて大怪我を負い、病室のベッドに横たわるスタントマンのロイは、自暴自棄になっていた。
そこに現れたのは、木から落ちて腕を骨折し、入院中の5才の少女・アレクサンドリア。
ロイは動けない自分に代わって、自殺するための薬を薬剤室から盗んで来させようと、思いつきの冒険物語を聞かせ始める。
それは、愛する者や誇りを失い、深い闇に落ちていた6人の勇者たちが、力を合わせて悪に立ち向かう【愛と復讐の叙事詩】―。(公式サイトより)
公式インスタグラムでは、ターセム監督の作品に対する考えや意図をQ &A方式で答えています。
その回答を見ていくと、監督が“物語”の原点を描きたかったということがよく伝わってきます。
「子供たちは物語を勝手に解釈し想像を広げていたという状態を表現したかった。
映画を見たことのない子どもが、タランティーノやスコセッシ、ジョン・フォードを知らない状態で初めて映画を見たらどう感じるのか。
その真っ白な目をラストで描きたかった。(公式Instagramの投稿より)
まだ『映画』というものを見たことがない少女の想像が、壮大に広がっていく。
これぞ映像芸術。約20年前の作品なのに全く色褪せない。映画館で観るべき作品です

ターセム監督が語る『落下の王国』の裏話
もう少し、公式Instagramでターセム監督が答えていた内容をご紹介いたします。
(※ここからは少しネタバレを含みます)
(新宿武蔵野館にて開催のオンラインイベントターセム監督とのQ&Aセッションより)『落下の王国』は監督の頭の中のイメージをそのまま現実に落とし込んでいるように感じました。
そのイメージが、制作の過程で薄まったり変わってしまったりすることはあるのでしょうか?また、そうなった時はどうやってイメージを取り戻したり、方向性を整えたりするのでしょうか?

私はこの映画を思いついてから実際に撮るまで20〜30年かかりました。
その間、人生経験も変わり、作りたいものがちょっとずつ変わっていくということはありました。
作り始める時には「真っ白なキャンバス」で、すべての意見をオープンに受け入れることが大事だと思っています。
この映画も、アレクサンドリア役の少女の意見によってどんどん変わっていった部分があります。
監督としてコントロールは握っていますが、“変化を受け入れること”が進化であり、良い悪いではないんですね。ただ、宗教的な場所での撮影など、どうしても譲れない部分は譲りませんでした。(以下、引用内、公式Instagramより)
28年ほどの長い年月をかけて準備をしたそうですが、どのような部分を変更していったんだろう?

実際に書き換えたところは 2つあります。
まず、アレクサンドリア役の女の子、カティンカ・アンタルーちゃんです。
彼女とのシーンは順撮りで、時系列通りに撮っていきました。
薬の入っている瓶を取ってくるというシーンがありますが、本来の設定は、瓶の中の薬の数がロイが自殺するには足りないというものだったんです。
ですが、カティンカちゃんが、劇中に出てくる “E” を “3(さん)” と読んでしまったんですね。
それで、本当はボトルいっぱいに薬が入っていたところを、3つだけ残して全部捨ててきてしまった。
それでロイがイライラする、というシーンになりました。
つまり、アレクサンドリア役の子が実際に “E を 3 と読んでしまった” ことがきっかけで、ああいう流れになったんです。そこは彼女のおかげで変わった部分です。
アレクサンドリアの可愛らしさが光る、とても印象的なシーンにそんな裏話が!?

もう一つ、変えた部分があります。
病室にいた、アレクサンドリアにいつも怒りをぶつけていたおじさん。
彼を悪役にするつもりで、クランクインの 1ヶ月前までずっと考えていたんです。
ところが、その頃ちょうど私は恋人と別れてしまい、人生で一番つらい時期に差し掛かっていました。
そのとき、石岡瑛子さんのパートナーで共同脚本のニコ・ソウルタナキスから、「ロイの元カノの新しい彼氏を悪役にしたほうがいいんじゃないか?」と提案があったんです。
それが当時の自分の状況とも重なって、「それはいいね」と思い、長く温めてきた悪役像を撮影の 1ヶ月前になって急遽変えました。
そして、もうひとつだけ「変えておけばよかったな」と思っていることがあります。
悪役が死ぬときに “I’m not feeling very well.”(気分が良くない)と言うんですが、 あれは病室でアレクサンドリアにいつも怒っていた男性がよく言っていたセリフなんです。
でも、悪役自体が元カノの新しい彼氏に変わったので、彼が現実でよく言っているようなセリフにしておけばよかったな、と。
20年経ってからそう思うようになりました。もしかしたら、将来変えてしまうかもしれません(笑)。
監督の実生活の経験も組み込まれながら『落下の王国』のストーリーは出来上がっていったんだね

原題『TheFall』について
ターセム監督は、『The Fall』のタイトルの意味について聞かれこう答えています。
東洋の方はタイトルが何かとか、その意味は何かとか、そういったことを気にしすぎかなと思います。
どんな意味にも取れますし、どんな感じ方も正解です。
“落下”は物理的に落ちる、ということにもなり得ますし、季節の“秋”という意味にもなり得る。
高い位置にいたキャラクターが下に落ちてしまう、といった意味にもなり得ますし、様々な形になり得ます。
なにかひとつを意味しているわけではなく、どんな意味に取っても良いのです。
私にとって名前というものは、それほど重要なことではありません。(公式Instagramより)
『The Fall』、完璧なタイトルだと思います。
ロイとアレクサンドリアを繋ぐキーワードであり、
空想世界に“落ちていく”=自分の内面に深く入り込むことを示唆しているからです。

事故で橋から“落下”して病院に入院中のスタントマンのロイ。
アレクサンドリアは家業を助けるためオレンジの収穫中、木から“落ちて”腕を骨折し、
病院に入院している少女です。
そして2人の出会い。
アレクサンドリアが“落とした”手紙はロイの元へと風で運ばれていく。
その手紙をアレクサンドリアが取り返しにきたことで、2人は出会います。
“落下”がロイとアレクサンドリアの共通点となり、2人を繋ぐキーワードになっているのです。
この作品のなかには、まだまだ“Fall”が散りばめられています。
アレクサンドリアは、ロイから頼まれた薬を持ってこようと薬剤室の棚を上り、足を滑らせて“落ちて”しまうこと。
ロイが語る物語の終盤、アレクサンドリアを助けたインド人は“落下”して命を“落とす”こと。
『落下の王国』は間違いなく生涯ベストテンに入る作品
ストーリー、美術、音楽、カメラ、演技などなど……総じて、私にはブッ刺さりました。
これほどまでに感動した映画体験はなかなかありません。
この作品を観ることができて、とても嬉しい。
Tシャツもポスターもパンフレットもゲットできたこともとても嬉しい。
円盤化を願っています。